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Hej Judeと『善き人のためのソナタ』
先日知ったHey Judeに関するエピソード。ビートルズの代表曲で、内容も易しいことから中学や高校の英語の授業でとりあげられることもあったはず。最後のリフレイン、ナーナーナー♪も有名ですね。
離婚したばかりのジョン・レノンの子供、ジュリアンに会うポール・マッカートニーが「ヘイ、ジュールズ」と声をかけて励ますつもりだったが、なんとなく語感としてジュードにして、少年に対する励ましの歌詞を書き上げたという。ポールがthe movement you need is on your shoulderという歌詞を仮に作って「ここはベタすぎるから後で変えるよ」とジョン・レノンに言ったら、「え?なんで?ここが最高なんじゃないか」と言われたとか。(ここまではただの雑学)
さて本題。この曲チェコではHej Judeという名で発表されたらしい。当時のチェコは社会主義国であり西側諸国のものに厳しく、どこかのレーベルが歌詞も全く違うものにして女性歌手に歌わせた。それが大ヒットしたけれど、その結果なのか、ビートルズの曲だとバレてしまいやっぱり発売禁止になってしまう。それでも一部のチェコ国民はレコードを庭に埋めて隠し、80年代末に社会主義が崩壊した時に喜んで掘り出したらしい。
以前にここで取り上げたチェコを舞台とした「存在の耐えられない軽さ」の映画でHej Judeが流れ、サウンドトラック盤にも入っていたけれど、その理由がやっとわかった。当時流行した曲でもあるし、発禁処分自体もその時代や社会を反映したものだったということだろう。
こんな話から「善き人のためのソナタ」という別の映画を思い出した。舞台は同じく社会主義体制の東ドイツ。ある反体制思想の強い作家と舞台女優のカップルがいて、その動きをチェックする厳しい保安省の役人。日々盗聴でカップルの生活を記録し、また作家が自宅のピアノで弾く(人前での演奏が禁じられている)「善き人のためのソナタ」という曲に聞き入るうちに、役人は人間味を取り戻していく。彼はなんとか二人が逮捕されないように立ち回るようになる。
色々あってその役人は仕事を失い、やがてドイツも統一する。ある日、元役人となった男はそのソナタのレコードを見つける。その作家による推薦文には「あの頃、知らない誰かによって助けられていた気がしている」と感謝が含められている。レコードを購入する際に「プレゼント用に包みますか?」と聞かれ彼は「いえ、自分のためなので」と答える。二つの意味で。
筆後贅言
自分はパリにいた頃、この作品を友人に誘われてCour Saint Émilion駅前の映画館で見た。ドイツ語の作品なのでフランス語字幕だったが、(恥ずかしながら)字幕のないフランス映画よりずっと理解できた。その後、友人とバーに寄ってワインを飲みながら「良い映画だったね」なんて話して過ごした。普段人と映画を観に行くこと自体ほとんどないだけに、そんな稀少な記憶が余計にこの作品を印象的にしているのかもしれない。なんらかの体験を伴ったものは強い。それこそ土からレコードを掘り起こす感動はサブスクからは得られないわけで。
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