CHAPTER 014

『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』とGod bless the child

God bless you

 

クシャミをしたときに使われることが多いといわれ、そう言われた方はThank you、と返すのが礼儀という。フランス語でもあってÀ tes soihaitsと言い、言われた方はやはりMerciと返す。(クシャミを悪いものとして扱い)何かと神のご加護とかそういう概念のある欧米特有の習慣だろうか。

 

 

そういう表現がそのまま小説のタイトルにもなっている。カート▪︎ヴォネガットのGod bless you, Mr.Rosewater、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』というもの。ローズウォーター財団の総裁、エリオットという男の話だ。

 

 

このエリオット、とにかく生活に困った人に経済的に支援する。電話も「はい、ローズウォーター財団です。なにかお困りですか?」と自分でとる。ただ闇雲にお金を撒き散らすだけではなく、「そんなにいらないだろ」とか注意もするし、何より相談者との皮肉と愛情がこもったやりとりや、ふと出てくる表現も実にヴォネガットらしい。

 

 

「いつも善良なふりをしろ、そうしたらきっと神様も騙せる」

 

「涙も笑いもなにひとつ解決してはくれません。(中略)でも無意味な笑いも存在しません。どんな笑いでも、きっと笑ったような気分になりますからね」

 

と、こんな感じ。電話で相談を終えたあと、相談者はタイトルのようにGod bless youと挨拶をする。

 

 

実はエリオットは戦争でドイツにいた際、敵兵だと思い込んで殺してしまった相手が実は地元の消防隊員だった、という過去をもつ。その贖罪としての慈善行為の一環なのかもしれない。プルーストがドストエフスキーの作品には副題を「罪と罰」とつけられる、と書いたことで有名だが、これはヴォネガット作品にも通じる気もする(『タイタンの妖女』とかね)。そして妻シルヴィアもエリオットを理解しようとするも(そしてエリオットは助けを求めてくる人達が必ずしも善良とは思っていない、と妻にだけは話している)、ついていけず離婚。裕福だけど寂しい人生でもある。

 

 

 

 

あるとき遠い親戚のフレッド(彼は彼で決して恵まれない生活をしている)をたぶらかし、財閥の財産をとろうとする税理士も現れる。そこでエリオットはある手段を選ぶのだが、それまた上手いというか豪快だ。ちょっと笑えちゃうけどそれでいて人類愛に満ちている、ヴォネガットらしいエンディングを迎える。

 

 

さて、この小説のタイトルにそっくりの名でビリー・ホリデイの曲、God bless the childの話をする。多くのジャズシンガーはもちろん、アレサ・フランクリンなんかも歌っている。歌詞は黒人霊歌、キリスト教の影響が強い(自ら助く者を神は助ける、とかね)。小節数が独特だから楽器演奏でやられることは少ないけれど、有名なものはSonny RollinsとKeith Jarretのものか。キースの方は8ビートで軽く演奏している。それまたなかなか良い。

 

 

 

こう考えるとGod blessというのはクシャミのときだけでなく、挨拶、そして神の恩寵の表現としても使う。実に幅広い表現だけど、この小説のように挨拶に使うときは「おつかれさん」とか「お気張りやす」とか「飴ちゃんあげるで」とか、気軽な感じなんじゃないかな。(おっと、関西圏みたいな表現を書いてしまった)なんにせよGodの概念自体も把握できていない自分としては「なんかいいことありますように」とか「いい夢みろよ!(柳沢慎吾みたい)」程度にとらえているし、決して嫌いではない。

 

 

 

まあそんなわけで、こんなまとまりのない雑文をよんでくださった皆様にも。

 

God bless you.

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