Just one of those things、コール•ポーターの代表曲の1つ。簡単に訳したら「それらのうちの一種」みたいな感じになるだろうけど、口語として「よくあること」みたいに使われているらしい。歌詞としても失恋を歌っていて「よくある話だ」みたいに使われてる。いいですね、こういう諦念みたいな表現は。
たまたま前回書いたカート•ヴォネガットの『スローターハウス5』ではSo it goes、という文句が繰り返される。「そういうものである」などと訳されていて、考えてみたら自分のブログやらここの文の中でも何かと使っている。 ちょっと俯瞰して見る感じもいいですね。『スローターハウス5』はまさに筆者ヴォネガットの経験が下敷きになっている。アメリカ兵としてドイツにいたら捕虜になってしまい、ドレスデンの収容所にたいしてアメリカ空軍が爆撃を続け、ヴォネガットは死ぬ思いをする。「捕まった兵はアメリカ人ではないのか?」「捕まったアメリカ人はドイツ人同様、敵なのか?」とか色々な疑問を覚えたことだろう。死んだら英雄、生き残ったら恥さらし。そういうものである。何が?戦争が。
とにかくSFのような異世界、過去、戦時中などを行ったりきたりするヴォネガットらしい小説なんだけれど、やたらとSo it goesが繰り返される。特に誰かが亡くなったときに。病気だろうが事故だろうが、若かろうが「そういうものである」となる。その妙な軽さが悲劇的要素をなくしているとも言える。
Just one of those things、So it goesもそうだけど、なんとなく俯瞰して見た方が楽なことはたくさんある。失恋する、悲しい。でもいつか終わるものだったろうし、仕方ないね。ペットが亡くなる、辛い。でも人間が寿命長いのは自然なことだし、出会えて暮らせただけでもよかったよね。と、まあこんなもんで。
さて曲の話。個人的にも結構好きなスタンダード曲の1つだ。半音でルート(ベース音)が動いていくところが短調の曲にしては珍しく効果的に使われている。(I should careとかNight and dayに似たコード進行。そういえばNight and dayもコール•ポーターか)歌でもそれなりに速く、楽器ではとんでもなく速く演奏されることもある。バド・パウエルなんか衝撃的だったな。バドやアート•テイタムの影響もあるのかピアニストは特に速いかもしれない。メロディーが長くのびることもあって管楽器奏者もお手のものか。パーカーもキャノンボールもやっている。ブランフォード•マルサリスも初期のアルバムの一曲目でやっていたかな。
最近久々にこれを聞いたのは先日チャボロ•シュミットが来日して、彼の録音を思い出したから。Miri famiriaという、初めて日本にきた頃(20年以上前!)のアルバムの最後の曲。音の伸びないマカフェリギターで、ところどころに入れる経過音や、あえてアクセントで和音を短く切ったりするのが絶妙でお見事。最後にとちって笑い声が入っているのも愛嬌があって良い。元々好きなテイクだったけど、久々に聞いて改めて発見があったり色々と感慨深かった。(チャボロとは初来日のときに聞いて感激したり、フランスでしょっちゅう会ったり演奏したり、その後も日本に来る度に会ったり。色々あったけど、興味ある方は過去のブログに書いていると思うので探してみてください。今回も久々に会えて、聞けてよかった)
にしても、Just one of those thingsで書き出してみたら、なんとヴォネガットの話を二回連続でやるとは(しかもスローターハウスも手元にないし、話が薄い!)。なんと計画性も芸もないことか。仕方ない、そういうこともある。So it has gone.