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『昼下がりの情事』とFascination
『昼下がりの情事』、またもやビリー・ワイルダーの映画の話。すみません芸がなくて。ついうっかり昼間にやっていた映画を見てしまった。
舞台はパリ。オードリー•ヘップバーン演じる女性、アリアンヌが主人公。彼女の父は探偵で不倫調査を主に行っている。父娘二人暮らしでアリアンヌは音楽院でチェロを専攻、時おり父親のファイルを覗いて他人の恋愛や逢い引きの話で楽しんでいる。
ある日、ある男が父の事務所を訪ねてくる。アメリカの大富豪、フラナガンが彼の妻と不倫しているらしい。彼は銃をもってホテルに行くと騒ぎ、それを知ったアリアンヌはホテルに先回りをしてフラナガンに伝えてその場をしのぐ。
フラナガンは彼女に興味を抱く。アリアンヌも彼に夢中になるが、しょっちゅう離婚訴訟をしているようなフラナガンに対し、アリアンヌは恋愛経験なんてないに等しい。父のファイルから知ったエピソードを語り、いかにも幾多の男性と付き合ってきたように振る舞う。
そんな風にしてフラナガンも嫉妬するようになったり、アリアンヌの父親は娘がチェロケースを持って出てるのにチェロが家にあることに気づいたり、と物語は進むんだけど、ストーリーもさることながら細部が本当におしゃれだ。フラナガンと知り合ったアリアンヌが家でチェロの練習をしながら新聞の記事でフラナガンの情報を探すんだけど、そのときには左手で新聞をめくるのに夢中で右手で適当に開放弦を鳴らしてばかりいる。それを聞いた父親は譜面台を見た後に「ハイドンの88番って実に退屈だな、前のやつの方が楽しかった」とか言ったりする。なおこの新聞記事のなかに日本語の新聞もあって『新聞王ケーン氏、死す』という見出しもある。これはオーソン・ウェルズの映画『市民ケーン』をもじったもの。芸が細かい。
あとフラナガンがいつもホテルリッツの一室に四人組の楽団を呼んで同じ曲目を演奏させる。それがホテルだけでもなくて、サウナに入る際にも演奏させるし、映画のエンディングにもしっかり登場する。その際に演奏するのが、この映画のテーマ曲でもある'Fascination'だ。この曲自体が物語の鍵にもなっている。アリアンヌがある日から口ずさみ、それを父や友人は聞く。
さてFascinationは『魅惑のワルツ』という邦題がついている(一応)ジャズスタンダードでもあるけど、歌がメインだろうか。そんなに演奏される曲ではないと思う。知らなかったけれど、元々はイタリアの作曲家マルケッティがフランスのカフェのために1904年に作ったもので、この映画でリバイバルヒットしたようだ。映画の舞台もフランスだしちょうどよかったのだろう。曲調も穏やかなワルツで弦楽、ヴァイオリンの音色がとてもよくあう。
思えば1904年といえばベルエポックの時代そのものだし、ある種の憧れを含めて作った曲なのかもしれない。それを改めて世に知らしめたこの映画は恋に憧れる女性の物語でもある。「憧れるのをやめましょう」ってことも時にはあるけれど、何かに憧れる純粋さ、ひたむきさが魅力的に写ることもある。本作のオードリーは本当にチャーミングだ。(結局、オードリーが可愛い、という話になってしまった)
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