CHAPTER 020

年末にまつわる2つの作品

芥川龍之介の「年末の一日(いちじつ、と読む)」。年末が近づくと、この作品を思い出すことがある。すごく短い作品で青空文庫にもあるんでよかったらどうぞ。

 

 

私小説で、主人公は芥川本人(らしき人物)。年末に家族がバタバタする中、新聞記者の友人が遊びにきて夏目漱石の墓参りをしたいから教えてくれ、と頼まれる。以前に教えると約束していたし、家にいても仕方ないので案内するも、雑司ヶ谷霊園の中で迷ってしまう。友人の何気ない「聞く人もいませんし、困りましたね」という声がいかにも本人を責めているように聞こえる。なんとか見つけたあと友人はありがたそうにお参りをして、自分は墓をすんなり案内できなかったので後味が悪い。帰り道一人になると箱車を押す男がいて手伝って一緒に押してやる。

 

 

とまあ、こんなあらすじなんだけど、芥川本人らしき主人公にはまさに「ぼんやりした不安」めいたものがついてまわっていて、はっきり言ってずっと暗い。家の人達が掃除やら忙しくしてるなか、自分は疎外感を覚える。友人を迷わせてしまって自責の念を感じ、彼が漱石の墓に一礼する中、自分は呆然と立つ。ただそれだけに、最後の箱車を押す描写「まるで僕自身と闘うように一心に箱車を押しつづけて行った」が実に良い。繊細さ故の力強さ、エネルギー。こういうところこそ芥川文学の真髄なのではないかな。

 

 

さて音楽。年末といって思いつくのは第九。しかし第九について書くのもしんどいから、タイトルからしてWhat are you doing New Year's, New Year's Eve?にする。文字通り新年の前夜、つまり大晦日の夜の予定を尋ねる曲名だ。エラ・フィッツジェラルドやカーペンターズも歌っている。実に穏やかな曲調だけど、きっと恋人もいるんだろうし望みは薄いけど思いきって「大晦日は予定あるの?」と彼に聞いてみようか、というドキドキとした歌詞。自分はこの時期になるとエラのクリスマスアルバムをよく車の中で流すもんでよく耳にしている。ジングルベル、サンタが街にやってくる、という元気で明るい馴染みある曲が続き3曲目がHave yourself a merry little Charistmas。で、その次がこの曲だ。クリスマスを象徴するような曲がゴロゴロ並んだあとにこの曲で、良い意味でちょっとした中休みのようになっている。年末になるとこの曲をよく思い出す、というほどではないし、関連性は皆無に等しいけれど、どちらも年末にふさわしい名作ということで選んでみた。

 

 

ともあれ今年もお世話になりました。この独特な雑文にどれほどの需要があるかはわからないけれど、こういう文を書くのも面倒でもないし、一応来年も引き続きやっていこうと思います。どうか皆様、良いお年を。

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